『学校の近くの向日葵の道をずっとまっすぐ行って、その先の分かれ道を錆びれたポストのあるほうに曲がって・・・』
小さな橋を渡ってすぐの大きな家が、アイツの家。
Z 変化
あの後、サイに頼みごとをした。
ナルトの家を教えてほしいと。
彼はなぜだか嬉しそうに笑って、自分のスケッチブックを少し破って地図を書いてくれた。
(たとえ物置状態だとしても一応ここは美術室なんだから紙なんて大量にあるというのに何故わざわざスケッチブックを破る必要があるんだと聞いたら、「サスケが迷子になると困るからね。」なんて言われた。まったく意味が分からなかった。)
サイと別れてすぐ学校を飛び出し、いつもの向日葵の小道を歩く。
夕焼けにはまだ少しだけ遠かった。
すこし紅く染まった空がそれを物語っている。
足取りが軽かった。
隠し事を一気に話したからかもしれない。
自分の話をあんなに親身になって聞いてくれたやつは、もしかしたらここ何年もいなかった気がする。
単に自分が他人と関わない生活を送ってきただけなように思ったが、サイもサクラも、もちろんナルトも、今まで居なかったタイプの人間だった。
すべては初めてこの学校に転校してきたあの日、・・・嫌な思い出だが、初めて迷子になった日でもあるあの日から・・・いや、本当はここに引っ越してきてから始まっていたんだ。
そう思うと少し笑えた。
ここに来る前の自分は、田舎であるこの土地を酷く嫌がっていたってのに。
今になってみると、どうしてあんなに都会を気に入っていたのか思い出せなくなっていた。
ここには、都会に無い、本当に綺麗なものばかりだ。
しばらくいくと、やっと『小さな橋』とやらが見えた。
奥には少し古めの大きな家が建っていた。
サイの描いてくれた地図のとおりなら、あそこがナルトの家なのだろう。
改めて地図を確認すると、少し紙がふやけていた。
ずっと手に握っていたから汗でこうなったんだろうが、ふと先程のサイの言葉を思い出して、もしかして彼はこうなることを知っていて、汗まみれになっても平気なように厚い紙に書いてよこしてきたのだろうかと考えて恥ずかしくなる。そして、なんだかちょっと嬉しかった。
『小さな橋』は小さいと表現するよりかはしょぼいといったほうがあってるかもしれない。
太くて短い丸太が渡りやすいようにほんの少し加工されているものだった。
ひょっとしたらナルトの父親が小さいナルトの為に作ってあげたものなのかもしれない、なんて考えながら細い流れのゆっくりした川(?)をまたいで奥へ進む。
ナルトの家はもうすぐだ。
―――
しぃんと静かな広い空間。
部屋に入ってくる西日がうっとおしくてカーテンを勢いよく閉めた。
ナルトは自室のベットに座ってぼんやりとしていた。
一人暮らしの生活にはもう慣れてしまった。
朝は6時に起きて就寝時間は22時。
朝昼晩しっかり御飯は食べてるし、宿題も家庭教師との授業もちゃんと頑張ってる。
両親が居た時と変わらない生活。
担任のカカシ先生、家庭教師のイルカ先生が毎日ナルトに会いに来てくれてるからだ。
2人共すごく忙しいはずなのに、自分のことに1番時間を使ってくれていることを知っているナルトは、それが嬉しくもあり、非常に辛い事でもあった。
だから一昨日、2人に「もう一人でしっかりできるから、用事のあるときだけで大丈夫だってば」といっていつものように笑ってみせると、2人はすごく苦しそうな、悲しそうな顔をして、そして微笑んで「分かった。」と言ってくれた。
自分から言い出したことなのに、急に一人になったのはやっぱり辛くって。
そして、久しぶりに昨日はこっそり学校へ行ってみたのだ。
とは言ってもカカシに見つかると怒られるかもしれないから、幼友達のサイが描いてくれた絵が飾ってあるであろう、本来誰も立ち入ろうとしない旧美術室へ行ってみた。
そこで絵を観ながら、まだ桜が咲いてた頃に、よくここでサイやサクラちゃんとおしゃべりしたってばよ、なんて思い出していると。
昨日のことを思い出して、クスッと笑う。
最初はびっくりして、次はむかついて、今度は楽しくなって。
あんなにコロコロ自分の気持ちが変わったのは久しぶりだった。
新しく出来た友達、サスケ。
会ったのは昨日、友達になったのも昨日なのに、ずっと前からの友達みたいに感じた。
外見はカッコ良くってクールに見えて、実は嫌味で、捻くれてて。
そして、イルカやカカシ、サイやサクラのようなあたたかな優しさを感じた。
だからうっかり自分の病気のことを喋ってしまって、そしたらアイツは物凄く傷ついた顔してた。
同情なんかじゃない、と思う。多分。
大きく見開かれた黒い瞳に、吸い込まれてしまいそうだった。
「・・・サスケ、どうしてあんな顔したんだろ?」
ごろりとベッドに寝転がる。
あの瞳が忘れられない。
気になったけれど、もう会いに行くこともできない。
昨日の夜からずっと、眩暈が酷くなった。
ナルトの体は、もう立って歩くことも困難になってしまったのだ。
もしかしたら、もう死期が近づいてるのかもしれない。
そう思うと、大切な人に会うのが辛くて、それも会いにいけない理由の一つだった。
死ぬんだったら、この場所で、独りで死にたい。
大好きな人たちの顔を見ると、きっと未練と後悔ばかりだ。
きっと泣いてしまう。
それが嫌だった。
『終わり良ければすべて良し』といわれるように、笑って死んでいきたい。
早く、母さんと父さんのところに・・・・
〜♪〜♪♪〜♪〜
突然、部屋に携帯の着信音が響き渡った。
驚きながらも、開いてみると、そこには
『うちはサスケ』の名前。
ナルトは急いで通話ボタンを押した。
※このあたり、すごく書きたかったのでやっと書けて満足です^^