『・・・っはいはい!もしもしサスケ?!』
昨日ぶりのアイツの声。
その声からは全く想像がつかないけど、お前が今この瞬間も無理してるんだってことはもう知ってる。
だから、これ以上無理させないために、そのために。
「今、お前の家の前にいるから。」
一言伝えて、ブツンと切った。
[ 想い
「びびったってばよサスケェ〜・・・。あんな、怪談に出てきそうなことすんなってば!」
「そんなの知るかよ、ビビリくん。」
「あーーーっ!!ちょっと、なんだってばそれぇぇ!?俺ってば、全然びびってねーってばよ!」
「何言ってんだテメーは。さっき自分で言っといて。」
「んがあああっ!ちくしょー・・・・!」
二人で玄関に突っ立っている。
出てきたナルトがやけに緊張したようにドアを開けてきたので、こっちのほうが驚いた。と、言おうと思って、やめた。今日は喧嘩をするために来たんじゃない。
「・・んでサスケ。今日はどーしたんだってば?ってか、なんで俺ん家しってんの?」
「・・・・一度に聞くな。家はサイに教えてもらった。」
そういって、さっきの地図をみせる。
「なんだ、昨日ストーカーされてたのかと思ったってばよー」
「んなことするかよ・・・・」
「で!?何しに来たんだってばサスケッ!」
後ろに花でも咲いてるんじゃないのかと思うくらいの笑顔。
これを素でやってのけてるんだから恐ろしい。
「・・・今日は話があって、来た。」
「おう!」
「お前が昨日見せてくれた、あの絵あるだろ?」
「?うん、あるってばね。」
「あれさ、本当は、前からずっと観てたんだ。」
「へ?そうなの?なんだー、別に合わせてくれなくっても良かったんだってばよ?」
「あの絵を観るために、毎日あそこに行ってた。ずっと、お前に会いたいって思ってた。・・・・何故だか分かるか?」
「・・・・うーん、サスケが本当にストーカーなんだって分かったってばよ。」
「・・・・・・・・」
「あっ、ごめん嘘嘘!えーっと、ナンデデショウ?」
「・・・・・ウスラトンカチ」
「お前またそれっ!やめろってば!約束破り〜っ!」
目の前で(少し怒ってるけど)ケラケラ笑うナルトをみて、やっぱり愛しくて、苦しくて、しょうがなくなる。
そんな気持ちが顔に出たのか、途端にナルトが心配そうに顔を覗き込んできた。
「サスケ?平気かってば?顔、すごい苦しそう・・・」
「・・・・・ぁぁ。」
まっすぐ俺を見つめてくる、青空を閉じ込めているような瞳。
男が男を好きになるなんて可笑しいとは思うけど。
それでも、自分のこの気持ちは絶対に恋だって言い切れる。
コロコロ変わる表情も、声も、しぐさも、全部昨日会ったばかりだってのに愛していると言い切れる。
・・・・このまま、消えさせたくないと思う。だから・・・・
「・・・ナルト。」
「ん?何?あ、やっぱり具合悪ぃ・・・・っ」
―――顔近づけてくるお前が悪いんだぜ、バーカ。
心の中でそう毒づいて、軽く触れるだけのキスをした。
重なった時間はとても短いのに、酷く長く感じた。
「・・・・なに、すんの?サスケ・・・。」
瞳に映るのは、驚きと不安、疑問の色。
「好きだ。」
ハッと、ナルトが小さく息を呑む。
「・・・昨日、会ったばっかりだってばよ?」
「だから、俺は前からお前の事、知ってたんだって、言ったろ。」
「それってば、絵観てただけなんだろ?俺のことなんにも知らないのと同じだってば・・・。」
「だからなんだってんだよ。我ながら恥ずかしいが、一目惚れしちまったんだからしょうがねぇだろっ」
「でも・・・・・」
「・・・なんだよ。」
「・・・・・・」
お互い、沈黙してしまった。
おとこがおとこを好きになるのって、おかしくねぇ?とは、ナルトは言えなかった。
言ってしまえば、サスケがもっと苦しそうな顔をしてしまう気がした。
今だって、すごく泣きそうな顔をしてる。
(きっとサスケは、本気なんだ。本当に俺のこと・・・)
気持ち悪いとは思わなかった。
むしろ、(自分にとっては)昨日初めて会って、ちょっとおしゃべりして、友達になれた人に『好きだ』なんて言ってもらえるのは素直に嬉しかった。
でも同時に、なんて言ったらいいのか分からなくなる。
ナルトにとっては、サスケは友達であって、一緒にいて楽しくって、もっともっと仲良くなりたいと思う存在だ。
好きだけど、それはサスケの言う「好き」とは違う気がする。
それでも、もっと仲良くなりたいと自分が願っていて、拒絶したくないと思っているのだから、サスケの思いに答えようと思った。
だけど。
自分はもう、此処に居られなくなるのだ。
大好きなお父さんとお母さん。
別れはあまりにも突然で悲惨で。
病院のすぐ近くの交差点、横断歩道を一人で渡って、後ろから来る両親のほうを振り返った途端、大きな音。
信号を無視した車が、二人を宙へ浮かばせて、強く叩きつけた、瞬間。
目の前で死んでいった両親の顔は、いまでも鮮明に覚えている。
真っ赤に染まった道路の上で必死に呼びかけたけれど、二度とその口は開かなかった。
2人共、本当にあたたかくて、優しかった。
病気のナルトのために、色んな事をしてくれた。
とっても嬉しくて、ちょっとくすぐったかった。
だから、それを失った悲しみは半端じゃなかった。
涙は出てこなかった。
先生達も、サクラもサイも、みんな心から心配してくれたけど、もう立ち直れそうに無かった。
病院に連れて行かれそうになっても、必死に抵抗した。
ただ死が訪れて自分を両親のもとへ連れて行ってくれることを願って。
生きていく気は、起きなかった。
自分の運命に従おうと思った。
それが、俺の人生だってばよ。
答えは決まった。
――――――
「・・・サスケ、俺ってば、お前の気持ちすっげー嬉しいけど・・・・、やっぱり、無理だってばよ。」
言いながら、胸が痛んだ。
折角できた、友達だったのに。
自分から拒絶するのに、すごく悲しい。
でも答えは決まってるから。
だから、これで・・・・
「・・・・なにが無理なんだ?」
「・・へっ?」
「お前の答えなんて聞いてね―よ。」
「え、じゃあ」
「今日の昼休みにな、サクラに教わった。」
「何を?」
「『好きなものは好きなんだからどうしようもない』って。」
「・・・・・・・・」
「サイからも、お前のこと色々聞いた。お前、お通夜のときも葬式の時も泣かなかったんだってな。」
「・・・・だから、なんなんだってば?」
「病院も、行ってないらしいな。ずっと拒否ってるって、聞いた。」
「・・・それが、どうしたんだってばよ?別に、俺の勝手だってばよ。サスケにゃかんけーねーってばっ!」
「関係ある。」
「は?!」
ほんの一瞬の間。
そして、
「お前は自ら死を望んでるんだよな。両親の後追って。事故の話とか、色々サイから聞いたんだ。
・・・・・俺の親はちゃんと生きてるから、その気持ちはちゃんと理解できないと思う。
けど、お前を失うのはすごく辛いんだ。 大切な人を失う気持ち、お前は知ってんだろ?
なら、俺やサイやサクラの、置いて行かれる悲しみ、分かるだろ―が。」
黒い瞳がまっすぐ見つめてくる。
ナルトはじっと黙っていた。
「・・・・でも、てめーは考えを曲げようとしない性格らしい。それなら俺も、そうしようと思う。」
「え?・・・・わっ!?;;」
気付いたときにはもうすでに遅く。
ナルトはサスケに、おんぶされていた。
「〜〜〜ちょっ!サスケェ!お・・降ろせってばよぉっ!!///」
「耳元で騒ぐんじゃねぇよ、ウスラトンカチ!」
「なっ・・・!何する気だってば!?」
「てめーを病院に連れて行く。」
「はぁっ!?ぜってーヤダ!!下ろせってばーーっ!!」
「・・・・っなにがなんでも生きてもらう!」
サスケの背でじたばた暴れていたナルトは、その一言にぴたりと大人しくなった。
「サスケ・・・」
「てめーが両親の後追うってんなら、俺は全力で止めるぜ?病気で死にそうってんなら、俺が全力で直す方法探してやる。」
「・・・・・」
「残念だったな、ナルト。俺に惚れられたのが運のツキだ。お前の望んでる人生、大きく狂わせてやるから覚悟するんだなっ!」
その途端、サスケは背中に、あたたかい雫がぼたぼたと落ちるのを感じた。
それでもかまわず、自分の家まで歩き出した。
※
強引なサスケを描きたい!と、勢いで書き上げました。