「てめーが両親の後追うってんなら、俺は全力で止めるぜ?病気で死にそうってんなら、俺が全力で直す方法探してやる。」
なんて。
自己中にもほどがあるってばよ。
・・・・だけど、
\ 命と心の重さ
夕暮れ時とはいっても、夏の終わりだといっても、まだ暑さは変わらなくて。
自分と同じくらいの男をおぶって長い道のりを歩くことに限界を感じたサスケは、ナルトの手首を引いて歩いていた。
ナルトはあれ以来何も喋らない。
俯いて、サスケに引かれるままに歩いている。
そんなナルトの姿を見ていると、先程の自分の口に出した言葉がすごく恥ずかしくなってきて、サスケまで俯いてしまった。
今日一日で今まで隠してきた色々をすべて吐き出してしまった。
そうしたことは自分にとってとても楽になったけれども、その代わりにとてつもない恥ずかしさが残ってしまったのだ。
『ナルトは、どう思ってるんだろう・・・』
いや、答えなら聞いた。「無理」と。
お前の答えなんて聞いてないと言っておきながらもやっぱり辛い。
正直なところ、昨日あったばかりの人間にいきなり告白されて付き合えるやつなんているんだろうか。
更には、そんなやつに自分の生き方まで左右されるなんてありえない。
それも、男が男に、なんて。
酷く滑稽な話だ。
キバのやつが聞いたら眼をおもいっきり見開いて、盛大に笑う事だろう。
『勝手な事ばかりして、俺は、最低だな・・・』
繋いだ手を離して、逃げ出したい気分に駆られて、でもそんなのは逃げてるだけだと抑えつけた。
ただひたすらに自分の家まで歩く。
背中に落ちた涙の雫は、とっくに乾いていた。
―――――
家に着いた時にはもう19時を過ぎてしまっていた。
学校を出たのがたしか16時くらいだったから、すこし紅く染まっていた空はすっかり薄暗くなっている。
門のところで手を離すと、ナルトはハッと顔を上げて、不安そうな表情で俺を見つめた。
「・・・ここ、俺の家だけど、ちょっと上げれよ。」
「・・・・・なんで?ぃいよ、俺ってば、帰るから・・・。」
「ずっと俯いてたくせに帰り道なんて分かるかよウスラトンカチ。いいから、上がれ。」
命令するような喋り方を使って、ひたすらさっきの自分とナルトを繋ぎとめる。
ナルトは少しムッとして、それでも諦めたのか「わかったってばよ・・・」と言って、また俯いた。
ナルトを家に連れてきたのにはわけがある。
今朝、家を出るときに母親が楽しそうに自分に話してきたこと。
「今日、お兄ちゃん帰ってくるのよ」
サスケの兄、イタチは前に住んでいた都会で一人暮らしをしている。
家から病院までの移動が面倒だと言って引っ越していったのがつい5日前のことだ。
1ヶ月に1度帰ってくるとは聞いていたが、もう帰ってくるなんて、一体どういうつもりなんだ馬鹿兄貴と心の中で罵ったが、今のサスケにとってはその事がとても幸運な事だと思えた。
イタチは、まだ若いながらも超一流の医者なのだ。
もしかしたら、ナルトの病気を治せるかもしれない。
絶対に死なせたくない。
たとえ拒絶されてしまっても、ナルトには生きていてほしい。
一度離れた手をもう一度繋ぎ、ドアを引いて、サスケはナルトと共に家に入っていった。
「母さん、ただいま。」
サスケがそう言うと、奥のほうから真っ黒で長い髪をした、かなりの美人な女の人が出てきた。
「・・あら、お友達?」
「クソ兄・・・兄さん、帰ってるか?」
「待ってて、今お茶淹れてくるわ。惜しいわね、さっきまでお団子あったんだけど・・・。」
「上に居るから。」
ナルトは自分の手を引っ張ってさっさと階段を上がっていくサスケと、ニコニコと笑ってこっちを見ているサスケのお母さんと思われる女性の顔を交互に見ながら、
「・・・ぜってー、サスケの人の話を聞かないとこって親譲りに違いねーってばよ。」
と、こっそり笑って呟いた。
サスケの家はシンプルに統一されていて、最低限必要なものしかない、そんな感じだった。
フローリングもなにもかもピカピカで、まだ新築の匂いがする。
そうやって見渡しながら、手を引かれながら歩いていると、サスケは急に足を止めて、酷く顔をしかめて目の前のドアを見つめた。
「・・・・どうしたんだってばよ?」
気になって、ナルトが尋ねる。
「・・ナルト、先に言っておく。」
「なに?」
「お前はこれから少し窮屈な空間にいることになる。」
「え?サスケの部屋ってそんなにちっせーの?この家こんなおっきいのに?」
「そういう意味じゃねーよ・・・・まぁ、勘弁しろ。」
この時点でもうすでに色々諦めてやってるってばよサスケ。
と思ったけど、口に出すのは止した。
サスケの掌が、繋いでいた手を少し強い力でぎゅっと握ってきたからだ。
『きっと、この扉の向こうにはサスケが恐がるくらいの、とんでもなく恐ろしいものが居るに違いないってばよ。』
ナルトはサスケの手を握り返した。
「・・・じゃあ、行くぞ。」
「お、おうっ・・」
コンコン、とサスケがノックする。
返事は返ってこない。
それでも、サスケはドアノブを回して中へ入っていった。
中にいたのは、サスケがぐっと背が伸びて大人になったような男が一人。
ベッドに座り込んで最新の携帯ゲーム機をいじっていた。
突然入ってきた2人をちらりと見て、またゲームをいじりだす。
完全に無視だ。
「・・・おい、クソ兄貴。てめーは返事くらいできねーのか?」
サスケが冷徹な低い声で話し掛ける。
『クソ兄貴』と呼ばれた男はそんなサスケを無視してナルトに声をかけた。
「サスケの友達かい?」
「えっ、あ、はいっ!そうですってばよ!」
「そうか・・・。何もないが、ゆっくりしていってくれ。」
「あー・・・ありがとうございマス。」
「っクソ兄貴!人の話を聞けっ!!ナルトに話し掛けんじゃねぇっ!」
「ナルト君というのか。弟が迷惑かけていることだろう。勘弁してやってくれ、悪気はないんだ。」
「うん、大丈夫だってばよ。もう慣れたから。」
「そうか・・・すまないな。」
「大丈夫だって!」
―完全にスルーされたうえに、和やかに二人が自分の話で盛り上がっている(?)事にキレて、サスケが暴れだすのはこの10秒後のことである。―
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「・・・それで、何だっていうんだ?」
サスケの怒りをナルトが必死に宥めて、ようやっと落ち着いてきた頃にイタチが聞いた。
ナルトに頭をなでられるのに必死に抵抗していたサスケは、ハッと我に返ったようにイタチを見つめ、こう呟いた。
「・・・っ兄さん、あんたに、頼みがあるんだ。」
二人の様子をまじまじと眺めていたナルトは、急に静かになった空間に少し居心地が悪くなってきた。
『なんなんだってばよ・・・・。』
まず、自分がここに連れてこられた意味が分からない。
必死に今日のことを思い返してみるが、理由はまったく思い当たらない。
窓から見える外はもうとっくに真っ暗で(サスケが暴れすぎたせいだってばよ!)、自分の家に帰るのは、立っているのも困難なのに、何十分も歩くなんて不可能そうだ。
ちらりと横目でサスケを見つめる。
先程イタチの問いに答えた彼は、なかなかその続きを言い出そうとはせず、ただ真直ぐに兄を見ているだけだ。
ふうっと息を吐いて、フローリングの床に視線を落とした。
「・・・頼みがあるならさっさと言ったらどうだ。ナルト君も巻き込んでるんだ。早く言え。」
言い方はキツイものだったが、イタチの表情は(相変わらず無表情だったが)攻めてはいない。
そのことに、サスケは少し安心した。
ふとナルトを見ると、俯いて少し不安げな顔をしている。
病人のナルトを無理やりここまで連れてきたのだ。
もう逃げ出しはしないと誓ったのだ。
視線をイタチに戻し、サスケは、今度ははっきりとした口調で言った。
「・・・アンタに、ナルトの病気を治してほしい。」
その途端、ハッとナルトが顔をあげ、サスケをみた。
その瞳はサスケに何か訴えているものだったが、サスケは無視してイタチから目をそらさないようにした。
「・・・・病気を治す?」
「そうだ。ナルトの病はこの町の医者じゃ治せない。だから、あんたの力が必要なんだ。」
「っ待てってばよサスケェッ!!お前ってば、何勝手な事言ってやがんだっ!」
「お前は黙ってろ。お前の人生は俺が決める。」
「!?うえぇ・・・」
我慢できなくなったナルトがサスケにつっかかっていったが、あんまりにも理不尽なサスケの言葉に何も言い返せなくなってしまった。
「本人が納得していないのに、勝手な事を言うんじゃない。サスケ。」
「いいんだよっ!てめーはしらねぇだろうがなぁ、コイツはこのまま病気で死のうとしてやがるんだ!残された奴の気持ちをわかってるくせしやがって、だから・・・」
「サスケ、いいかげんにしろ。」
さっきとは違って、イタチの表情は明らかに怒っている風だった。
「命はその持ち主のものだ。お前の勝手で扱えるものなんかではない。
ナルト君の気持ちを理解できないくせにそんなことを言うな。お前こそ黙っていろ。」
「っ! ・・・・・。」
言い終えると、イタチはナルトに近づいて、じいっと見つめると「俺はナルト君が生きることを願うなら、治療を一生懸命させてもらう。・・・明日の朝までにどうするか決めてくれ。もし君が生きたいと願うなら、明日の朝、俺と一緒に俺が勤めている病院へ行こう。」
今日はもう遅いから泊まっていくといい。と言って、サスケとナルトを部屋から追い出した。
※色々と疑問点ばかりですが、そこはスルーしてください(←