□金糸雀色の宝石箱を閉じた
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箱入り娘のお嬢様とはよく言ったものだ。一人前に気は強いくせに、一人では何も出来ない。毎度のことだが、料理の腕だけは上がってほしいものだ。

「ウタカタ様!今日は焼魚ですよ」

満面の笑みで差し出されても、そこにあるのは黒い塊。どこが魚なのか問いたくなる。けれど、こいつの表情を見ればそんなことは聞けない。

「たくさん食べてくださいね。まだまだありますから」

こいつと旅をするようになって、色々気がついたことがある。ホタルは、世界を知らなすぎる。今まで砦で過ごしてきたからだろうか。

狩りの仕方も、野宿の仕方もわからない。泳いでいる魚は初めて見たらしく、どうして水の中で息ができるのか何度も尋ねられた。

「あれ…?この魚、全然美味しくない…」

黒焦げの魚を一口かじり、渋い顔をするホタル。当たり前だろと言いたいが、そんな表情も可愛らしいと思ってしまう自分がいる。

「しょうがないな。俺がもう一回釣ってくるよ」

「だめです!師匠の世話は、弟子がするもの…。ウタカタ様は座っててください!」

「お前の世話は逆に疲れるんだよ」

必死に俺を止めようとするホタルを他所に、さっきまで釣りをしていた川原に行く。もう辺りは真っ暗で、近くにいるホタルを確認するのがやっとだった。

「ウタカタ様!待って……」

俺の腕を掴んだホタルの声が止まる。視線の先は二人一緒だった。
さらさらと流れる水の周りに、無数の小さな光。やんわりと優しい灯りを瞬かせながら、ゆらゆらと飛んでいる。

「綺麗……。ウタカタ様、あれは何ですか?」

「ホタルだよ」

「ホタル?」

自分と同じ名前の光る物体に、ホタルは目を丸くさせた。そうか、こいつはホタルも見たことがなかったんだな。

「昆虫だよ。綺麗な水辺にだけ現れる、夏の虫だ」

「へぇ…。ホタル、かぁ」

手を伸ばして捕まえた一匹を、ホタルの掌へ渡す。ぼんやりとホタルの顔が黄色い光に包まれ、小さな歓声が漏れた。

「綺麗ですね、本当に」

「そうだな」

「私、虫は苦手ですけど、ホタルは平気かも」

笑顔になるホタルに、こっちまで嬉しくなる。なんてことのない、見慣れた昆虫だ。
それでも、それがどんなに綺麗で大切なものか、ホタルは教えてくれる。ホタルのおかげで、俺はたくさんの幸せを知った。

「ほら、ウタカタ様」

ああ、俺はどうしようもないくらい、ホタルが好きなんだな。














金糸雀色の宝石箱を閉じた (淡い灯りは、君が教えた幸せの数)




(ひじり様へ捧げ)(相互リンクありがとうございます´`*)
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hotaru*様!素敵小説どうもありがとうございますっ!
『世間知らずなホタルちゃん』という、なんともやりにくいお題でお願いしたんですがこんなにも可愛いウタホが出来上がるなんてっ!!
幸せそうな二人がとっても微笑ましいですv
あんまり素敵だったんで、ちょっと挿絵を勝手に描いちゃいました^^
(小説のイメージ崩してたらすみませんorz)
本当にありがとうございます!これからもウタホを応援していきましょう!!
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